Studio vetix

第五回「Voもレコーディング準備してるかな?」

名古屋の音楽リハーサルスタジオ「Studio VETIX」の河本です。
第5回目も、前回に引き続きレコーディングをテーマにお送りいたします!!

第5回【Voもレコーディング準備してるかな?】
レコーディングにあたって、楽器の中でもっとも波が出てコントロールしにくいのがボーカルレコーディングです。
人体そのものを楽器とするわけですから、その日のコンディションや、緊張具合、気分なんかでも随分と録り音が違ってしまうわけです。
楽器としてイキイキした音が出せる時間が「一番短い」のもボーカル。
レコーディングでは、どれだけボーカル録音する瞬間に合わせていろいろな条件を整えていくのか?が大切になります。
そこで、
今回は、そんなボーカリストがいい状態でレコーディングするための様々な方法を伝授していきます!

【レコーディング時の姿勢とは?】
レコーディング中によく目につくのは「姿勢」です。
レコーディングにあたって、ボーカリストが気をつけなければいけないことは様々ですが、最近は「姿勢」が良くないボーカリストが多いです。

ベストな「姿勢」は、個人の体型体格にもよるので、詳しく知りたい方はボーカルスクールなどに通ってマンツーマンで指導を受けるべきだと思いますが(ベティックスのボーカルスクールでも、最初は正しい「呼吸」と「姿勢」から教えていきます。)簡単に言えば「猫背にならずに胸元を大きく開いて遠くを見る姿勢」が理想の姿勢となります。
熱がこもったライブパフォーマンス用の「いつものラフな姿勢」では、熱どころか歌声も「こもって」しまって抜けが悪く伸びのない「通らない声」になってしまいます。

「なかなかスクールは通えない・・・」なんて方は、リハーサルの時に鏡のある部屋に入って、自分で姿勢を整え、「猫背にならずに胸元を大きく開いて遠くを見る姿勢」にした歌声を録音して、普段の歌声と聴き比べてみて下さい。
違いが判るはずです。そもそも、歌っていて「歌いやすさの違い」を実感するはずです。「あれ?今の声良くない?」なんて思えれば、それが正解です(笑)

「姿勢」について言えば、実は、「歌詞を見ながら唄う」事もNGです。
誤解の無いように言えば、レコーディング時に歌詞カードを目の前に置く事は構いません。
エンジニアとのやりとりに「この歌詞の何行目」といった形で使ったり、間奏明けの歌い出しフレーズを確認したり「気持ちが安心する」といった心理的効果も期待できるでしょう。
しかし「歌詞を見ながら唄う」と歌詞を見るために姿勢が前かがみになりやすいですし、その都度口元が動くので、録音された音にどうしてもムラが出てしまいます。
そもそも、歌詞が頭に入っていなければ、その曲で出したい感情やニュアンスも表現できませんよね。なので、ボーカリストたるもの歌詞は暗記が当然!というわけです。

【レコーディングまでにこんな練習も!】

前回のコラムでもお伝えしたように、レコーディングにあたって大事なのは「レコーディング環境と同じ練習をする」事です。
例えば、「ヘッドホンを付けて歌ってみておく」なんていうことも、大事だったりします。
人間は、耳の鼓膜を通じて聞き取る音と、体内に響き渡る音を脳でMIXして認識しています。
ヘッドホンをすることで、鼓膜で聞き取る音の量が減り、バランスがいつもとかわってしまい、「聞き慣れた自分の歌声に聞こえない」ということが起こります。
難しいこと抜きに、言えば・・・「耳をふさいで歌うと、いつもと違って聞こえる」現象ですね。慣れないヘッドホンの影響で、レコーディングの際、微妙にピッチがずれた歌声になったり、ヘッドホンをずらしてしまってそこからクリック音が漏れて「せっかく録れたOKテイク」が使い物にならなくなったりしてしまう事があります。そういった事故を防ぐためにも、レコーディングに向けて一度「両耳を手で塞いで(ヘッドホンを付けて)唄う」練習を試してみては如何でしょうか。

【レコーディング時は特に「倍のビートで」】
皆さんも、「裏のリズムを感じて!」と教えられたことがありませんか?
楽曲を演奏する上で、裏をしっかり感じることはリズムやノリの精度をあげることになりますので、大変重要なことです。
しかし、場馴れしたミュージシャンや普段からリズムを鍛えているドラマーならいざしらず、多くのアマチュアボーカリストのみなさんは
「裏なんて途中で解んなくなっちゃうよ!!」なんていうのが本音ではないでしょうか(笑)
実は、そんな悩めるプレイヤーたちにいつもかける魔法があります。
それは、、、。

「倍のビートでとってみてごらん」です。

BPM60の曲ならBPM120で練習をしてくる。
BPM120の曲ならBPM240で練習をしてくる。
BPM200の曲なら・・・400出せるメトロノームはあまりないと思うのでこの場合は使えないテクニックですが(笑)
とにかく、倍のビートを鳴らしながらそれにあわせて練習をしてくるのです。
(もちろん、単純に裏を感じることができるに越したことはないのですがこれでもまずは充分なのです!)

なーんだ。そんなことか。
と思うかもしれませんが、なかなか理解できない「裏を捉える」練習をするよりも、遥かにわかりやすく、納得しやすいので、レコーディング前の慌ただしい時期にもかなり練習がはかどります。
ちなみに、前回も触れて今回も後述するレコーディングの『キモ』である「パンチイン」の際も、この練習をしておくことで、しっかりと歌い始められるようになるんですよ。

【ボーカリストはパンチインを味方に!】
というわけで、前回も触れたレコーディングで有効利用するべき「パンチイン」について、ボーカルの視点からも触れてみましょう。
ボーカルはギターとともに、パンチインを使うことが多い楽器です。
しかしギターと違ってボーカルは「ナマモノ」。時間とともにその声質は変化してしまいます。そこで他の楽器とは違ったアプローチも必要です。
ボーカルレコーディングで、最もパンチインを使う率が高い場所は、サビなど「その曲で一番高音のフレーズ」です。
声・・・特に高音域は、調子の善し悪しで出せるかどうかがかなり変わってきます。もちろん、いつでも出せるように練習してくることが一番では有りますが、、、
そこで、前回にも触れたように「予めパンチインしそうな所をパンチインを想定して練習しておく」事がコツになります。

ではその練習方法ですが、具体的には先述したように「倍のビート」でクリックを鳴らしながら、その高音ワンフレーズだけを繰り返し歌います。
練習の段階でも、前のメロディに引っ張られない分、普段より思ったように歌えるのではないでしょうか?

なかなか上手く伸びやかな声が録れない場合、パンチインはとても有用です。
何度もテイクを重ねて声が枯れてしまう事態を防ぐためにも、パンチインをしっかりイメージした練習をしておきましょう。

【よくされる質問】
最後に、レコーディングにあたって、ボーカリストさんからよくされる質問にお答えしようと思います。
それは「レコーディング前には何を食べたらいいのですか?」というもの。
これに関しては、さまざまなボーカルトレーナーの方々から多種多様な案が出ていますので、一概にコレというのは難しい状況です。
一般的に言えば、唄う直前には何も食べず、前日から刺激物も控える。また飲み物は冷たすぎず熱すぎない「常温水」で喉を潤し、タバコやお酒はもってのほかで・・・といった感じでしょうか。
そういったものもふまえ、長年レコーディングに携わってきての私見を述べさせてもらうのであれば、レコーディング前の注意としてあるのは・・・

・レコーディング直前の食事は控える。しかし、空腹ではいい声は出ないので2~3時間前までに食べておく。
・NGな飲み物は、お茶(喉の油をとってしまう)や、糖分を含んだ清涼飲料水(タンが増えてしまう)、果汁をふくむ飲料水(アレルギー反応でのどが荒れる場合がある)や乳製品(タンが増えてしまう)
・タバコやお酒などは、本当は良くないが、吸っても影響のない人はガマンしないほうが良い(ホドホドに・・・笑!)

といったところです。
ほかに、レコーディングにおいてボーカルは「一番最後に録る」ことが多いため、待ち時間が長くなる傾向にあります。
たとえば1日で全パート録ってしまうスケジュールの場合、朝イチのドラムセッティングなどはボーカルが立ち会う必要もないため、「ボーカルは1時間遅れて集合」という配慮をするのも良いかと思います。
その分しっかりと睡眠をとることが、良好なコンディションに繋がるのです。
ボーカルはコンディション調整が命なので、大事なレコーディングの日にはバンド全体で配慮していくことも大切なのです。

・・・いかがでしたでしょうか?
最後まで読んでくれてありがとうございます^^

前回もお伝えしましたが、ライブに向けた練習で、ライブ時の動きやパフォーマンスをリハーサルするように、レコーディング前にはレコーディングに向けた動きや準備をしていくことが大切なのです。

また、ベティックスでレコーディングの際は、必ず事前にミーティングをさせて頂いております。
当日の環境を見てもらったりエンジニアが質問にお答えしたりアドバイスをさせて頂いくことで少しでも緊張を少なくいつも以上の演奏が出来るようにしています^^
一度当店でレコーディングを経験していただくのもバンドの成長に役立てると思いますので、ご利用下さい。

また次回、お会いしましょう!