Studio vetix

第八回「音作りにワクワクしてるかな?」

このコラムももう第8回目!早いものですね!
こんにちは。VETIXの河本です。^^

早速本題なのですが…。
ある日、ギタリストのこんな言葉を耳にしました。

「スタジオ練習の時は良い音が作れていたのにライブ会場に行くと良くなくなってる・・・」

みなさんも、似たようなセリフを言った覚え、ありませんか?
それは、せっかく作りこんでいった「音色」が、さまざまな環境の違いで変化してしまうことを嘆いたもので、バンドマンの皆さんなら誰もが感じた経験のあるものではないでしょうか。
そういった意見は、はじめはプレイヤーとして「音」に対して敏感になってきた証拠でもあるし、「違いに気づく」事ができているという意味では素晴らしい事だと思います。

しかし、せっかく楽しみなライブに対して、少しでもネガティブな要素となるのなら、その考え方はもったいない!!
思い当たる人は、考え方を変えてみませんか?

「このライブハウスではどんな音になるんだろう?どう対応してやろうか・・・楽しみ!」
てっ感じで^^ 
環境の変化や壁でさえ、楽しんで音作りをしていけるようになればいいのです!

というわけで今回のタイトルはこちらです ^^

第8回コラム『音作りにワクワクしてるかな?』


【音作りと言っても!】

ギターやベース等各楽器の音色作り。バンドの音量バランスとしての音作り。また、それがスタジオ練習に向けたものなのか、楽曲アレンジに向けたものなのか、ライブに向けたものなのか…。
などなど、ひとくちに「音作り」と言っても、いろいろな「音作り」があります。
せっかくなら全部触れてみたいのですが、ここで全部触れているといくらページをもらっても足りません(笑

ここではまず、「ギタリスト(ベーシスト)がスタジオ練習やライブ演奏時に目的の音に向けて微調整する『音作り』」に焦点を当てて解説し、そこから「バンドとしてのバランス」という尺度を通じて他の楽器についても少し触れていきたいと思います。

皆さんは、ここでいう「音作り」に苦手意識を持っていたり、軽視をしていませんか?
ギタリスト(ベーシスト)本人でなくても、バンドメンバーとして、「うちのギタリスト(ベーシスト)の「音作り」なんか苦手そうなんだよなー」なんて感じてる人もいると思います。
そんなバンドさんを見ると「音作り」は、本当は、とても楽しいし、やりがいのある事なのに、なんだかもったいないなーなんて思ってしまいます。

【なぜ音作りが苦手なのか?】

では、なぜ「音作り」を苦手になってしまったのでしょうか?!
それはきっと、経験上「音作り」がなかなかうまくいかなかった事が多いから・・・ではないでしょうか?

スタジオに2時間こもって、せっかくカッコイイ音の設定を作ったのに、何をどういじっても、本番でイメージ通りの音に近づけられない・・・
個人練習のスタジオとバンドリハで違う音になる・・・、いつも使っているアンプがあのライブハウスには備わっていないから無理だ・・・
などなど「音作り」の失敗談をよく聞きます。

でもこれ、実は「音作りの練習」でやるべき事を間違えているから起こる問題だったりするんです!

例えば、皆さんは、スタジオ練習の際に「この音気持ちいい!」となった際、アンプやエフェクターのツマミを見てメモをとったり、写真で記録したりして、次回の練習時やライブ時に再現しようとしていませんか?
そして、それを参考にして、次も再現をするものの、「せっかく作った同じ設定なのに同じ音が出ない!なんで?」となっていませんか?

もちろん、そのメモや写真は、ある程度音を再現する「目安」にはなるので大切です。
しかし、考えてみて下さい。

ギター本体は木ですし、アンプも同じ機種でも鳴り方にばらつきがあります。スピーカーもコーン紙と呼ばれる音を出す部分は紙でできている事が多いです。
気温や湿度も一定ではないし、場所によってアンプを取り囲む壁の材質、床の素材も違う為、音のはね方だって変わります。
アンプとプレイヤーの立ち位置や向きだって毎回少しずつ違うことでしょう。
そもそもプレイヤーは人間です。体調次第で強く鳴らせたり、いつもより優しく弾けたり、力の入り方も違いますし、実は耳の聞こえ方だって朝と夜で変わっています。

一見すると確実なものに思える各ダイアルの数字に合わせた「音」も、実はこんなにたくさんの(まだまだ書ききれていないほどの!)不確定要素を通って、「音」として届いているのです。

この事実を意識していれば、きっと見解は変わるはずです。
「同じ設定なのに同じ音が出ない!なんで?」ではなく、
「同じ音が同じ設定で出るほうが奇跡!」と思えるのではないでしょうか。

そして、音作りで大切なものこそ、この「同じ音が同じ設定で出るほうが奇跡!」という考え方なのです。
・・・では、そんな条件のなか、いつも自分が思い描く音で演奏するにはどうしたらいいのでしょうか?

【いままでの『音作り』考え方を変える】

音作りの為に個人でスタジオに入って、つまみの位置を決めて、よし!完璧なセッティングだ!!!
・・・もちろん、それも無駄ではありませんが、そこに、こんな「音作りの練習」を加えてみてはどうでしょうか?

今までどおりの「音作り」をしながら、

・アンプを置く位置を変える
・アンプのふり方(向き)を変える
・自分の立ち位置を変える

これらの事を行ってみる。

先程述べたように、「音」は、様々な条件によって常に変化してしまいます。
そこで、出来た音はそのままに、環境を変えることで、「どのツマミをどう触るとどう対応」できるか?を体感していくのです。
「ひとつの答え」を見つけても、それは「その場でしか通用しない答え」でしかないのですから。

そもそも、「目的の音が出せない」と気付けるのは、あなたが耳が良い証拠でもありますし素晴らしい事です!!
なので、せっかく良い耳を持っているのですから、自分を信じてとにかくツマミを操作して「どのような変化をおこすのか?」をどんどん体感していって自分の中に「対応基準」を作っていくという経験をいっぱい積んでいってみて欲しいのです。

例えば、アンプを置く位置を変えると音の響き方などが変わります(もちろん、それ以外も色々変化しますが)。
部屋の隅に置く場合と、部屋の真ん中に置く場合、壁の前に置く場合、鏡の前に置く場合、で反響する音が変化するのは想像できるのではないでしょうか。

また、アンプのふり方を変えると、音量感がわかりやすく変わります(もちろん、それ以外も色々変化しますが)。
スピーカーが自分を向いているかどうか?ですから当然ですよね。バンド練習でも例えばドラマーが「ギターが聞こえない」とギタリストに伝えてきた場合、単純にアンプの音量をあげるのではなく「アンプをドラマーに向けてやる」ことで解消したりします。また、最近ライブハウスで見かける、JC-120などのコンボアンプを「箱」に乗っけてあげてスピーカー位置を高くするセッティング。あれも、「アンプの振り方」の一種。そうすることでスピーカーが耳元に近くなり、中音(ナカオト:ステージ上の音)を上げなくても聞き取りやすくなる効果があるのです。

さらに、自分の立っている位置を変えてみるのも手です。
そもそもアンプというものは「遠くに音を飛ばす為の道具」です。
アンプの目の前に立って演奏していては、「本来の音」など聞こえるはずがありません。
「アンプ本来の音」が聞きたければ、最低でもアンプから1m以上は離れて聞いたほうが良いでしょう。つまり、「すぐ手を伸ばせばつまみがいじれる距離」で音を聞いて音色を調整しても、それは本来の音とは違って聞こえて当然なのです。もちろん、その「近い位置の音が好き!」なんてプレイヤーもいるとは思いますが、少なくともそれはライブセッティングをする上で好ましいものではありません(レコーディング時は有効ですよ!)。それは「お客さんにステージから漏れて聞こえているであろう音」とはズレてしまっているからです。

ちなみに、バンドでの練習時には「他のパートと立ち位置を変えてみる」のも有効な手段です。例えば、ギタリストがベースアンプの前で演奏して、ベーシストがギターアンプの前で演奏してみてください。今まではギタリストが「ベース小さいからもっと大きくして!」と、ベーシストに伝えていたとしても、実際にベーシストの立ち位置で聞くと「ベースの音量はしっかり出ていて、むしろギターが大きすぎたのだ」と気付けたりします。練習前ののセッティング(音出し)の時だけでも構わないので、メンバーで立ち位置交換をしてみると、それぞれの環境を理解したうえで、バンド全体が音に対して意識していけるようにもなるでしょう^^

【音作り=対応力ということ】

ここまで読んでいただければわかっていただけると思いますが、
「どんな状況の時、どんな対応をすればよいのか。」
「音作りが上手い」とは「対応力がある」とも言い換えることができるでしょう。

そして、その「対応力を磨いていく」という意識で音作りをしていれば、どんな環境のライブやスタジオでも、「このハコではどんな音になるんだろう?どう対応してやろうか・・・楽しみ!」
と、わくわくしていられる自分になれると思います!^^

これが、「音作りを楽しむ」スタンスなのです。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。
・・・いかがですか?
「音作り」に対して持っていた苦手意識は、少しは解消されたでしょうか?

もちろん「音」というのはとてもフワフワした存在で、ここで説明したところで100%伝えることはできていないと思います。
しかし、だからこそ無限大で楽しめる素晴らしいものでも有ります。
ぜひ、「苦手」と思わず、楽しんでほしいと思います!

今回はギタリスト(ベーシスト)に照準を合わせてお話しましたが、「音作りへの意識」のコツはどのパートにとっても同じことが言えます。
ぜひ、応用してみて、「音作りをワクワクしながらやってるバンド」を目指してみてくださいね!

それでは今回は、このへんで!またお会いしましょう^^

 

河本